研究概要 |
より早期にオッセオインテグレーションを獲得する方法として,チタンの表面改質が注目され,改質されたチタン表面に対する骨芽細胞の接着様式や骨分化マーカーの発現等,多くの検討がなされてきたものの,改質されたチタン表面が骨芽細胞の運動性にどのように影響を及ぼしているかについては全く報告されていない。そこで本研究課題では,さまざまな形状のインプラント表面上で同一の細胞がどのように形態を変え,またどのように移動するのかを長期間,詳細に分析することができれば,骨芽細胞に最適なチタンの表面形状を見つけることが可能となり,将来的に骨形成促進インプラント表面を開発する上で有益な知見が得られるのではないかと着想し研究を開始した。蛍光顕微鏡に細胞培養装置を取り付けることにより,培養液中のpHが一定となり,長期間の細胞動態の観察が可能となった。昨年度行った実験に加え,bFGFの細胞遊走に及ぼす影響を詳細に検討した。10%FCS含有α-MEM培地中に骨芽細胞(MC3T3-E1)を播種後,2.5ng/mlのhbFGF(繊維芽細胞増殖因子)を添加し,5分毎に24時間連続して観察を行った。その後各観察時間におけるチタン表面から1μm毎の水平断画像を重ね合わせ細胞の3次元立体構築を行った。細胞の厚みに関してはbFGF添加群と非添加群との間で有意な差は認められなかった。各種チタン上で培養した骨芽細胞の動態をリアルタイムで観察することにより,成長因子が細胞に及ぼす影響が明らかとなった。
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