研究概要 |
本研究課題の平成19年度の研究実施計画は,(1)脳の酸化ストレスモデルの確立を目的とした出血性ショックモァルの大脳皮質・海馬・視床下部におけるヘムオキシゲナーゼー1(Heme Oxygenase-1;HO-1)発現の検討,(2)脳酸化ストレスモァルにおけるCOの抗酸化作用の検討である。 申請者は雄性Sprague-Dawleyラット(8週齢)を用い,麻酔下に大腿動脈にカテーテルを挿入,平均血圧30mmHgとなるまで脱血を行いショック状態とし,1時間後脱血した血液を返血し蘇生を行うラット出血性ショックモデルを作製した。蘇生開始3,6,12,24時間後および3日後,7日後にラット犠死させ脳の摘出をおこない,大脳皮質・海馬・視床下部の標本を採取し,RT-PCR法にてHO-1mRNAの発現を検討した。その結果,蘇生開始後3,6,12,24時間の早期にはHO-1の発現はみられなかったものの,3日後,7日後には大脳皮質および海馬においてHO-1 mRNAの発現が認められた。すなわち今回の結果は,周術期の重大な合併症である出血性ショックにより脳が酸化ストレスを受ける可能性を示唆するものである。 周術期における脳の酸化ストレスは術後認知障害との関係が示唆されている。この術後認知障害は術後数日後に発症することが多く,今回得られた結果はこれらに合致しており,術後認知障害を解明するにあたり有用な実験結果であると思われる。
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