研究概要 |
これまでに,ヒトCD40リガンド(CD40L)遺伝子を組込んだファイバー改変型アデノウイルスベクターをヒト末梢血単核球より分離した樹状細胞に遺伝子導入を行ったところ,遺伝子導入された樹状細胞が成塾化に伴う形質変化をするばかりではなく,大量のインターフェロンγ(IFN-γ)を産生し,扁平上皮癌細胞に対して増殖卸制効果を示すこと,TRAIL受容体の発現増強およびリコンビナントTRAILを介したアポトーシスを増強することなどの様々な抗腫瘍効果について報告してきた。平成19年度は,このCD40L遺伝子導入により成熟化した樹状細胞が,IFN-γを介してNK細胞を活性化できるかどうか,そしそ樹状細胞と共培養することによりTRAIL受容体およびTRAIL感受性を増強した扁平上皮癌細胞に対して,NK細胞を介した抗腫瘍効果を誘導することができるかどうかを解析した。CD40L遺伝子導入により活性化した樹状細胞とトランスウェルプレートで接着を介さずに共培養したNK細胞は,細胞表面上のCD69やTRAILの発現を増強,IFN-γの産生増強などを示した。このCD40L遺伝子導入をした樹状細胞により活性化したNK細胞は,同様に樹状細胞と共培養することによりTRAIL感受性を増強した扁平上皮癌に対して,優位に細胞傷害性を示すことがわかった。これらの結果は,CD40Lが樹状細胞を活性化することによりTRAIL-TRAIL受容体を介した抗腫瘍効果を誘導する極めて重要な分子であり,その手法としてファイバー改変型アデノワイルスベクターを介した遺伝子導入が効果的であり,扁平上皮癌に対する新たな免疫遺伝子治療の可能性を示唆する結果となった。
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