研究概要 |
Hedgehog signalをはじめとした,receptor-ligand signalはがんの進展に関与する。申請者らはRAGE-HMGB1系の口腔癌における詳細を検討したところ,RAGE-HMGB1強発症例ほど局所進展傾向が強く,再発も多くみられ,RAGEの強発現は独立した予後不良因子となることが判明した。またRAGE-HMGB1シグナルは,VEGFを介した腫瘍血管新生の誘導により局所進展および再発をもたらすが,VEGF-Cは発現誘導されず腫瘍リンパ管新生には関与しないことが明らかとなった。またHMGB1によるRAGE活性化がNFkBp65の核内移行を促進し,核内HMGB1とNFkBp65がMIA promoter領域に結合することによりMIA発現を誘導していることが明らかとなった。さらにMIAはVEGF-C発現誘導を介した腫瘍リンパ日新生によりリンパ節転移を促進させることがわかった。 またTrk-NGF family signalを検討したところTrkB/TrkC共発現症例はT grade,Stage,リンパ節転移と相関しており,有意に予後不良であった。in vitroの系によりTrkB-BDNF系は口腔癌の増殖能の獲得に,TrkC-NT3系は浸潤能の獲得に関与することが明らかとなった。 さらに,唾液腺腺様嚢胞癌におけるReg IVシグナルを検討したところ,Reg IVの発現はリンパ節転移,遠隔転移と相関しており,Reg IV発言症例は有意に予後不良であり,Reg IVは腺様嚢胞癌の増殖能を促進させることが判明した。 以上より,receptor-ligand signalをターゲットとした口腔癌の分子標的診断・治療が有用である可能性が示唆された。
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