研究概要 |
骨延長術は骨の造成のみならず周囲の骨膜,筋,神経脈管などの軟組織も同時に延長されることから,従来の骨欠損部位に対する自家骨移植術にはない利点を有する。しかしながら骨移植法に比べ治療期間の長期化が大きな欠点とされている。近年,骨延長術の治療期間の短期化を目的とした骨硬化促進の研究がなされるようになり,今後,様々な研究に発展するもの考えられる。そこで顎骨に骨延長術を行い,延長部位に対しBMPを超音波遺伝子導入法にて骨芽細胞に導入し,骨硬化促進度合を解析した。対照群(単純骨延長群),実験群(BMP超音波遺伝子導入群)の二群に分け,骨延長終了,遺伝子導入後の期間によってそれぞれ1週,2週,4週群(各群:3匹)とした。手術は全身麻酔下にて行い,下顎骨体部の骨切りを行い,創外固定延長器を装着した。術後7日間の待機期間の後,0.5mm/日の割合で骨延長を行う。総延長距離は3.5mmとし,7目間の延長を行った。延延長終了時,延長部にマイクロバブル溶液0.5μ1をインジェクションし,超音波遺伝子導入器(ソニトロン2000N)にて下記の条件で照射した。照射条件:径3mm超音波照射端子,超音波エネルギー20W/cm^2, Duty cycle20%,照射時間60秒。以上の経過で延長終了後1週,2週,4週で安楽死させ,試料を採取した。結果として,両群とも延長部の骨の新生は経時的な増大傾向を示したものの,両群問に有意差は認められなかった。その原因としては,延長部への導入時期が遅いこと,またマイクロバブル注入部位が安定していなかったこと,BMP濃度の問題が挙げられる。しかしながら本研究は骨延長法の短期化を可能とするものであり,いまだ顎骨に対する報告はなされていなく,本研究は,顎変形症,顎骨再建およびインプラント目的の骨造成に応用でき,今後発展していく領域であると考えられる。
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