研究概要 |
テロメラーゼの活性化は癌細胞の持続的な成長や進展にとって重要である。ヒトロ腔における正常、前癌病変、癌組織のテロメラーゼサブユニットの発現を検出するとともにテロメラーゼ活性の発現との関連性、またhTERT検出の際、RTモチーフのdomain1,2に加え、domainA,B'領域について検出し、選択的スプライシングの可能性を検討した。テロメラーゼと各mRNAの検出にはヒト培養細胞、口腔扁平上皮癌、白板症、正常歯肉粘膜組織を用いた。テロメラーゼの検出には、modified TRAP assay、hTERT、スプライシングの検出にはRT-PCR法にて検出した。テロメラーゼは、正常歯肉では認めず、白板症、扁平上皮癌において活性の上昇を認めた。hTERT の発現も同様に正常歯肉では認めず、白板症、扁平上皮癌で認めた。テロメラーゼ活性とhTERTの発現は危険率1%で相関係数0.72と高い相関関係を認めた。またhTERT mRNA の domainA、B'領域で選択的スプライシングを高率に認めた。白板症、扁平上皮癌の検出においてスプライシングの全長が認められる場合でもテロメラーゼ活性が認められない例や選択的スプライシングを認めるにもかかわらずテロメラーゼ活性が存在する例があり、一定の関係は認められなかった。テロメラーゼを構成するサブユニットのうち、hTERTmRNAの発現は、テロメラーゼ活性の発現と高い相関を示し、テロメラーゼ活性発現の律速因子と考えられる。hTERTの選択的スプライシングによるタンパクの Variant がかなりの割合で生じていると考えられ、この Variantはテロメラーゼ活性の制御に何らかの関与をしていると考えられた。
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