研究概要 |
近年、先天異常や顎変形症患者における咬合治療や顎矯正手術の受診患者数が増加し、これら重症な患者の治療に対して、様々な難しい対応が泊られるようになった。本来、顔面骨格および顔表面形状における異常部位め診断や治療方針の立案においては、三次元的に把握することが必要であるが、現在は、頭部エックス線規格写真(セファロ)や顔面規格写真などの二次元画像に基づいて異常部位を診断することが通常行われている。セファロは線源、被写体、フイルムの距離は規格されていても、骨構造の位置によって拡大率が異なり変形しているため分析値は実測値と異なるといった問題点がある。また,このような患者には種々の顎口腔機能異常が認められるため,機能検査が必須になっている。本研究は,著しい進歩を遂げている磁気共鳴装置(MRI)やComputed Tomography(CT)を用いることにより,患者の立体構築した顎顔面形態上において三次元座標系を設定し,各計測点の三次元座標値を算出することで,顎顔面骨格および顔面軟組織の異常部位の特定とその程度を定量的に三次元的な分析・診断ができるシステムを確立した。そしで,これに非接触型三次元計測装置で撮影した歯列模型像を統合した後,6自由度顎運動データを組み込むことで,咬合接触状態を顎運動データと関連付けて顎口腔機能を4次元的に解析することが可能なシステムを開発した。 作成したシステムを用いることで,下顎運動の様相をアニメーション効果で患者に提示することにより,インフホームド・コンセントにおける分かり易いコミュニケーションツールとしても有用であることが分った。さらに,顎顔面領域における機能と形態の関連について詳細な検討が可能になり,今後の研究に貢献できるものと考えられた。なお,本研究成果は,平成19年に開催された日本顎口腔機能学会において学術奨励賞が授与されている。
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