研究概要 |
ヒト歯髄組織は,十分なインフォームドコンセントにより承諾を得た矯正治療患者からの治療上必要と診断された抜去歯牙を用い,摘出した歯髄組織を10%牛胎児血清添加イーグル変法MEM培地を用いてExplant Culture法で培養した.歯髄組織よりoutgrowthした細胞を分散後5-8代まで継代し,それぞれの分化誘導培地で培養した.象牙芽細胞および骨芽細胞の分化誘導では0.1mMデキサメタゾン,0.05mMアスコルビン酸,10mMβ-グリセロフォスフェイトを含むMSC培地を用い,軟骨芽細胞への分化には0.01μg/mlのTGF-β3を添加した.脂肪細胞への分化誘導には0.01mg/mlインスリン,0.2mMインドメタシン,0.5mM3-イソブチル-1-メチルキサンチンを含む培地を用いた.神経細胞への分化誘導には10ng/mlEGF,20ng/ml FGF-2,10ng/ml LIFを添加する.破骨細胞(または破歯細胞)への分化には活性型vitamin D3,Prostaglandin E2などの骨吸収因子を用いた.分化した細胞形質の検討では,象牙芽細胞はdentin matrix protein(DMP)1,core binding factor α(Cbfa)1,Bone sialoprotein(BSP),DMP2,osteocalcin(OC),alkaline phosphatase(ALP),骨芽細胞ではOC,Type I collagen,ALP,receptor activator of NF-Kb(RANKL),軟骨細胞ではbone morphogenic protein(BMP)-2,BMP-4,Collagen Type IIの発現について,RT-PCR,In situ hybridization,免疫組織染色を行った.破骨細胞ではカルシトニンレセプターの局在とTRAP染色および象牙質片上の吸収窩形成実験(pit formation assay)を行い,倒立顕微鏡(ニコン:ECLIPSE TE2000)で同定した.その結果,歯髄組織由来培養細胞では,象牙芽細胞,骨芽細胞ならびに脂肪細胞の形質を有する細胞が誘導され,組織体性幹細胞の存在することが示唆された.また,破骨細胞への分化誘導は,象牙芽細胞や骨芽細胞に比べ誘導効率が低いことが明らかとなった.
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