研究概要 |
平成19年度は,平成18年度にcDNAマイクロアレイを用いて乳歯の生理的歯根吸収調節因子として選別した分子の破骨細胞分化における役割について検討した。 その結果, (1)破骨細胞前駆細胞を破骨細胞分化必須因子(RANKL)で刺激するとTNFαを産生した。このTNFαはオートクライン的に作用することにより,破骨細胞の分化・誘導を促進していることを明らかにした(Biochem Biophys Res Commun.2007 15;945-5O)。これまで炎症時における過剰な骨吸収に重要な役割を担っていると考えられていたTNFαが,生理的な骨リモデリング時にも重要な役割を担っていることが示唆された。 (2)(1)と同様に破骨細胞前駆細胞をRANKLで刺激するとNotch2の発現が誘導された。破骨細胞前駆細胞をNotchシグナルの阻害剤,γセクレターゼ阻害剤で前処理した後にRANKLで刺激すると破骨細胞分化が抑制された。さらに,Notch2に対するshRNAを用いてNotch2の発現を選択的に抑制するとRANKLによる破骨細胞分化を抑制した。一方,恒常的活性型Notch2を破骨細胞前駆細胞に過剰発現させるとRANKLによる破骨細胞分化を促進した。また骨芽細胞をPTHrPで処理するとNotchシグナルのリガンドであるJagged1の発現が誘導された。さらにNotch2が。RANKLシグナルの下流分子として働くNF-κBと協調して破骨細胞分化を調節していることを明らかにした(論文投稿中)。以上の結果から,乳歯の歯根吸収時に萌出中の永久歯胚から分泌されるPTHrPが乳歯歯根膜細胞にJagged1の発現を誘導し,破歯細胞前駆細胞のNotchシグナルを活性化することで破歯細胞分化を制御している可能性が示唆された。
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