研究概要 |
歯周疾患が進行すると歯周組織の破壊と病的な骨吸収が引き起され,歯が喪失する。歯周病治療において歯周組織の破壊防止のみならず,失われた歯周組織を再生する治療が求められている。最近,細胞内のカルシウム(Ca)シグナル伝達阻害薬であるシクロスポリンAが骨吸収を抑制することが報告されたが,この薬剤は,免疫抑制剤のため,歯周治療に応用出来ない。そこで,Caチャンネル阻害剤のひとつである抗てんかん薬(Phenytoin)が骨吸収に及ぼす影響を解析した。平成18年度は,PhenytoinのLPS誘導性骨吸収に及ぼす影響を検討した。その結果,Phenytoinは骨芽細胞でなく,破骨細胞前駆細胞に直接働き破骨細胞分化を抑制していると考えられた。 平成19年度は,破骨細胞へのPhenytoinの直接的な影響及びin vivoでの作用を検討した。その結果,破骨細胞分化に重要な転写因子であるNFATc1やc-Fosの発現をPhenytoinは抑制していた。さらに,Phenytoinは破骨細胞分化に重要なNFATc1の核内への蓄積を阻害していた。また,in vivioでPhenytoinの骨吸収に対する作用を検討したところ,骨吸収の充進したマウス(sRANKLトランスジェニックマウス)の病的骨吸収に対して,投与部位の局所でPhenytoinは強い抑制作用を示した。 本研究により,Phenytoinは局所骨吸収を抑制することを明らかにした。更に,歯周病などの局所炎症性骨吸収疾患に対して有効な治療薬となりうることが示唆された。
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