ペプチド性成長因子の1つであるIGF-Iは骨芽細胞や骨細胞の分化・増殖を促進し、骨形成や骨細胞のアポトーシス抑制に関与する。顎骨の成長発育および老化抑制に対するIGF-Iの影響を明らかにすることを目的に、IGF-I投与による顎骨の形態および組織変化を検討した。さらにIGF-I投与中止後の変化についても検討した。実験動物は、10週齢ウイスター系ラット雄24匹である。IGF-I製剤を背部皮下組織より4週間持続投与し、高IGF-I血症ラット(12匹)を作製した。コントロール群(12匹)には、生理食塩水を4週間持続投与した。投与中止直後(各群6匹ずつ)および投与中止後さらに4週間飼育後(各群6匹ずつ)に、上下顎歯列弓の印象採取を行った後に屠殺し、下顎頭を摘出した。上下顎歯列弓の模型を作製し、歯列弓の大きさを測定した。下顎頭に関しては、組織切片を用いて軟骨細胞層の厚さ、骨基質面積比、骨芽細胞数、破骨細胞数を計測した。以下にこれまでの研究成果を示す。 ラットへのIGF-Iの持続投与により、 1.下顎骨歯列弓は上顎骨歯列弓に比較して大きくなった。 2.下顎頭の軟骨細胞層が肥厚し、骨基質面積比が増加した。 3.下顎頭の骨芽細胞数は増加したが、破骨細胞に変化はみられなかった。 IGF-I投与中止4週間後では、 1.上下顎骨歯列弓の形態的不調和は改善しなかった。 2.下顎頭の軟骨細胞層の肥厚および骨基質面積比の増加は消失した。 3.下顎頭の骨芽細胞数の増加も消失した。
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