研究課題
若手研究(B)
近年、脳血管障害の発症と歯周病の関連が報告されているが、MR画像で認められる無症候性の病変については未だ検討されていない。大脳白質病変はMRIのT2およびプロトン密度強調画像で高信号域として見られる虚血性病変であり、症候性脳血管障害のハイリスク群として近年注目されている。本研究は大脳白質病変の容積と歯周病およびその転帰である歯の喪失との関連を検索した。被験者は認知機能障害やうつ状態を認めない69〜75歳の居宅高齢者108名(男女各54名)であり、本研究の趣旨と内容および安全性について口頭および書面にて十分説明し、同意を得ている。大脳白質病変は、T1強調、T2強調およびプロトン密度強調の3種のMR画像から、人工ニューラルネットワークによる非線形クラスタリングの手法を応用することにより自動的、定量的に検出することができる。本研究では、この手法を利用して頭部MR画像から大脳白質病変の容積を自動的に算出した。歯周病の指標にはCPITNを用いたが、中高齢者における歯の喪失の主原因は歯周病であることから、現在歯数についても検討した。その後、大脳白質病変の容積を従属変数、年齢、性、収縮期血圧、随時血糖値、喫煙状況などのほか、CRITNまたは現在歯数を説明変数として有意水準5%で重回帰分析を行った。その結果、大脳白質病変の容積増加の因子として、CPITNは有意ではなかったが、現在歯数の減少は年齢上昇(P<0.01)、収縮期血圧の上昇(P<0.01)とともに有意であった(P<0.05)。したがって、歯周病の炎症の進行や蓄積は、年齢や血圧と独立して病変の形成に関与する可能性があると考えられる。
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