研究概要 |
本研究の目は,ラット歯周炎モデルを用いて歯周炎の病態とそのモデルに機械的刺激を加えた場合の効果についてMicroarrayを用いて遺伝子発現パターンを解明することである。平成18年度は,ラットを3群(歯周炎群・刺激群・対照群)に分け,各群の組織評価および歯肉からのRNAの抽出を行い,その質を確かめた。H19年度は前年度得られた歯肉のRNAを増幅してマイクロアレイ解析を行い,標本上で関連タンパクの局在を確かめた。 マイクロアレイのデータをKEGGパスウェイにより解析した結果,対照群に対して歯周炎群でMAPK signaling pathway中の遣伝子が最も多く変化した。またタンパクレベルで確認するために免疫染色を行った。接合上皮基底細胞のproliferating cell nuclear antigep陽性細胞とp-ERK陽性細胞は一部共存していた。この増殖充進には,LPS刺激によるERKのリン酸化が関与しているかもしれない。また,結合組織のMatrix metalloproteinase(MMP)2とMMP14の発現が尤進しており,MMP2とMMP14による基底膜の破壊が接合上皮深部増殖に関与している可能性が示唆された。これらの発現は,電動ブラシによる機械的刺激を与えた群では抑制がみられなかった。形態学的にも接合上皮の深部増殖は抑制されなかった。 結論として,歯周炎モデルにおいて,接合上皮の深部増殖にはERKを介するMAPK-pathwayや,MMP2とMMP14による基底膜の破壊が関している可能性がある。これらの因子は機械的刺激では抑制効果がなかった。
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