研究概要 |
本研究では在日外国人女性のうち,近年その外国人登録数が増加傾向にあり,また外見上,日本人とよく似ていることから日本文化の無言の強制が大きいと報告されている中国を中心に,農村で日本人男性と国際結婚した外国人女性の妊娠・出産時に大きな影響を与える日本人家族との関係性について把握することを目的に調査を行った。今年度は特に,以下の2点について検討した。第1点は,これまでの調査で把握できた家族関係に関する問題が表面化する産後の時期の前,つまり妊娠期における家族関係構築に向けての看護支援の検討である。「日本人配偶者」という特性の明確化をめざし,在留資格として「留学生の家族」に対象を絞り,妊娠期における家族関係構築の現状について,昨年度に引き続き検討した。その結果,夫婦間での対話によって様々な行動を選択している様相が把握でき,対話の多さは信頼感や満足感をもたらしている様子が理解できた。まずは夫婦間での対話による相互理解の機会を習慣化しうる支援が重要との示唆を得た。第2点として,中国東北地方に居住する中国人女性11名の実情から,妊娠・出産時の慣習と家族の支援の様相について把握することを目的とした面接調査を実施した。その結果,慣習としては食事や動静,冷え予防を留意しているものの,先行文献と比べ,その遂行は厳重さが緩やかとなっている様相が把握できた。また支援者として,夫など家族とともに,特別な教育を受けた産後1ヶ月間の支援専門者を雇用するとの声が多く聞かれた。また,この時期は中国人にとっては非常に重要な時期であるため,妊産婦は周囲の者から大切に扱われるという前提があり,支援を受けられない状況は考えられないという心情が明らかとなった。これらのことより,日本で妊娠・出産を経験する中国人女性の直接的な支援とともに,家族に対しての支援に対する示唆を得ることができた。
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