研究概要 |
本研究は,がん患者が治療法を選択する際にどのような事項を重要とするのか検討することを目的とした。 AHP(Analytic Hierarchy Process:階層分析法)の手法に基づいて,質問票を作成した。AHPは,人間の勘や直感というあいまいな部分を数値化する。 1.アンケート調査結果 対象は,卵巣がんまたは子宮体がんと診断され,A病院で手術と術後補助化学療法を受けて,現在は経過観察中の患者である。調査期間は,平成19年12月〜平成20年4月である。調査の実施にあたって,所属施設の倫理審査委員会の審査を受け,承認を得た。 33部配布し,31名から回答を得たが,AHPの設問について整合度の基準を満たした17名を有効回答とした。17名の内訳は,卵巣がん8名、子宮がん9名で,年齢は,49歳以下2名,50歳代8名,60歳代6名,70歳以上1名であった。 2.分析・考察 「再発、転移の不安」「副作用のつらさ」「家族のすすめ」「医療者のすすめ」「経済的負担」という5っの評価基準について一対比較を行い,全体では「再発、転移の不安」「医療者のすすめ」「副作用のっらさ」の順に重要度が高かった。年齢グループ別の分析では,検定の結果,有意差はみられなかったが,各個人を比較すると,評価基準の重要度の数値はそれぞれ異なっており,個人の価値観の違いを数量化して把握することができた。 がんの治療法選択では,がんの場所や広がりのほか,患者の年齢や体力,家庭状況などを考慮すると,多様な選択肢がある。また初回治療だけでなく,補助療法,再発・転移時の治療というように,意思決定の機会は増加している。患者の意思決定に関わる評価基準とその重要度を目に見える形にすることは,患者・家族と医療者のコミュニケーションを促進し,患者が自分自身にとって最良の治療を決定する一助になると考える。
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