研究概要 |
強皮症のモデルマウスであるtight skin(TSK/+)マウスおけるBAFFの発現異常を解析し,BAFFシグナルをターゲットとした分子標的療法がTSK/+マウスの治療において有用であるかを検証した. まずTSK/+マウスにおける血清BAFF濃度をELISAにて測定ししたところ,野生型マウスと比べTSK/+マウスでは生後4週,8週と有意に血清BAFF濃度の上昇を認めた.次にBAFFのアンタゴニストであるBAFF-R-Igを新生児マウスの時点から腹腔内投与を開始し,8週齢の時点で解析した.野生型マウスと比べTSK/+マウスでは皮膚疎性結合織が増生しているが,BAFF阻害により,有意に減弱した.またBAFF阻害によりB細胞の分化成熟が阻害され、さらにTSK/+マウスで認められる,高γグロブリン血症および自己抗体の産生が抑制された.TSK/+マウスの皮膚では繊維化促進作用のあるTh2サイトカインが有意であることが知られている.マウス皮膚よりmRNAを抽出し,各サイトカインをreal time RT-PCRにて測定したところ,TSK/+マウスで発現亢進しているTh2サイトカインがBAFF阻害により減弱し,反対にTh1サイトカインが亢進した.B細胞のサイトカイン産生能に対するBAFFの作用を解析するため,脾臓由来B細胞をBAFFとBCRシグナルを誘導するSACの存在下にて培養し上清のサイトカインをELISAにて測定した.適切なBAFF刺激にてB細胞はIL-6とIL-10を産生することが示された.特に,野生型マウスと比べTSK/+マウスでは線維化を促進するサイトカインであるIL-6の産生が有意に亢進していた.BAFFを介したシグナルがTSK/+マウスの病態に関与しているおり,BAFFをターゲットとした分子標的薬が強皮症の治療にも有用である可能性が示唆された.
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