研究概要 |
本研究は,日本の学校における健康教育教科「保健科」の成立過程を史的アプローチにより明確にすることを目的とし研究を行った。 これまで日本における健康教育教科「保健科」が学校教育課程に位置づけられたのは第二次世界大戦後のことであり,その導入は,占領軍統治下で進められ教育改革によるとされていた。しかしながら,本研究により,実際には,日本の学校において健康教育が注目され始めたのは,昭和初期の健康教育運動にまで遡り,戦前昭和期に学校健康教育の受容基盤を形成していたことが,戦後の健康教育教科成立に至る展開に,大きな影響をもっていたことを明らかにした。 以上の研究結果のように「保健科」成立史を戦前昭和期まで遡り,検討、実証した研究は皆無であったことから,本研究で明確にした成果は重要な結果であると思われる。 本研究では,日本の学校において健康教育教科「保健科」が誕生するまでの制度史的アプローチだけではなく,学校健康教育思想が日本に定着する過程にまで遡り,昭和戦前期に展開された健康教育運動と戦後健康教育教科「保健科」誕生の関係,そして,戦時下で展開された大政翼賛会厚生運動と健康教育教科誕生の関連を思想史的アプローチにより明確した。 以上に示した結果は,今日の「保健科」が抱える問題を,教科成立時にすでに包含していたことをも同時に明らかにしたことから,今後「保健科」改革を行うための思想的・制度的フレームワークをも提示できた研究となった。 本研究成果は,2007年6月10〜15日にカナダ、バンクーバーで行われた健康教育世界会議(IUHPE),同年9月14〜16日に千葉県市川市(和洋女子大学)で開催された第54回日本学校保健学会にて研究発表を行った。
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