研究概要 |
本研究では,現在匂いセンサが持っている問題点(ベースラインのドリフトやバックグラウンドの匂いの影響など)を解決するために,生物の優れた情報処理機能に着目して,その神経計算メカニズムを匂いセンシングシステムに応用することを目的としている。本年度の成果は以下の3点である。(1)嗅球の神経回路では,側抑制によりパターンの先鋭化を行っており,複数の匂いの判別を容易にしていると考えられている。本研究では,この神経回路モデルをディジタル回路で実現するために,ハードウェア化が容易になるようにモデルの簡略化を行った。簡略化したモデルをシミュレーションした結果,オリジナルの信号を使用した時より匂いの判別が良くなる事が分かった。(2)匂いセンサにおけるベースラインのドリフトやバックグラウンドの匂いの影響を解決するために,嗅覚順応モデルを応用したアルゴリズムを提案した。実際の匂いセンサ応答を用いて検証した結果,提案アルゴリズムが有効であることを確認できた。(3)本研究では,上記のような新規の匂いセンサ信号処理手法を検証するために,汎用的に使用できる検証用匂いセンシングシステムの構築を行っている。設計の遅れのため残念ながらまだ完成していないが,匂い供給部分,匂いセンサ駆動回路,センサ信号取得用のソフトウェアなどを作製した。現在センサセルを作製中であり,それができ次第検証実験を行っていきたい。
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