研究概要 |
脳梗塞後に内因性神経再生が起こるかどうかを検討する目的で、6〜10週令の雄SCIDマウスを用い、中大脳動脈永久閉塞により、脳梗塞を作成した(J Clin Invest,114:330,2004)。脳組織での神経幹細胞を観察する目的で、1週間目に脳を灌流固定した後、脳梗塞瘢痕部を含む脳切片を作成し、神経幹細胞マーカーであるnestinに対する免疫組織化学を施行した。また、梗塞巣内での神経幹細胞の存在を確認する目的で、1週間後の梗塞瘢痕部のみを取り出し18,23,27ゲージの注射針で物理的に細かくした後にEGF,bFGF,N2存在下DMEM/F12培地で培養することによりneurosphere形成を試みた。 その結果、脳梗塞1週間目では脳梗塞瘢痕部及びその周囲に神経幹細胞のマーカーであるnestirr陽性細胞の発現を認めた。一方、培養梗塞瘢痕部からはneurosphere様細胞塊が出現し、培養開始16日後には直径80μm以上の細胞塊が1dishあたり約50個得られた。細胞塊はnestinを発現しており、分化させてRT-PCRで検討したところ、nestin,神経細胞マーカーであるMAP,アストロサイトのマーカーであるGFAP,オリゴデンドロサイトのマーカーであるPLPの発現を認めた。さらに、免疫組織化学でも神経の3系統への分化が確認された。分化した細胞の一部は電気生理学的に機能的な活動電位を有する機能的神経細胞であることも確認された。 本研究により、成体神経幹細胞が脳梗塞瘢痕部に存在することが明らかになり、その単離に成功したことから、この幹細胞の脳梗塞治療への応用の可能性が示された。
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