研究概要 |
本研究では,これまで高校生を対象に明らかにした知見を大学生と中高齢者に発展させることを踏まえ,量的観点ではなく,質的観点に着目した運動経験と運動習慣の因果関係を検証することを目的とした.本年度に行った研究によって得られた知見は以下に示すとおりであった. 1.大学生における運動習慣の獲得に必要な過去の運動経験 【目的及び対象者】本研究では大学生における現在の運動習慣と過去の運動経験の量的関連性,量的関連性の高校生との相違,大学生における運動習慣の獲得に必要な過去の運動経験の基準を質的観点から検証することを目的とした.対象者は一般男子大学生217名(19.6±1.4歳)と女子大学生43名(19.6±1.2歳)の計260名であった.【結論】1)大学生における現在の運動習慣に対して過去の運動経験が影響する.2)運動好意度よりも過去の運動経験量が現在の運動習慣に対して強い影響を及ぼす.3)大学生よりも高校生における現在の運動習慣に対する過去の運動経験の影響のほうが小さい.4)過去に経験した運動・スポーツ種目数と現在の運動習慣の関係について,2種目以下よりも3種目以上のほうが有意に習慣的運動実施者の割合が多いが,効果量は小さい.5)ボールゲーム・ラケットバット系種目の運動経験と現在の運動習慣の関係について,運動経験なしよりも運動経験ありのほうが有意に習慣的運動実施者の割合が多いが,効果量は小さい. 2.成人期以前の運動経験が中高齢者の運動習慣に及ぼす影響 【目的及び対象者】本研究では成人期以前の運動経験に着目し,成人後の運動習慣獲得に影響する要因を検討することを目的とした.対象者は地域のコミュニティクラブ(運動サークルと文化サークルを開講)に所属する成人80名(男性24名:67.6±6.2歳,女性51名:59.2±8.2歳,不明5名:69.7±4.5歳)であった.【結論】成人期以前の運動経験は成人後の運動習慣に対して直接的な影響よりも運動好意度を介した間接的な影響のほうが強いことが推察された.
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