土砂災害、特に崩壊や地すべりの素因のひとつとなるスメクタイトの鉱物学的特徴を得るため、災害発生箇所および非発生箇所に産するスメクタイトを採取し、室内分析を行った。これまでの結果では崩壊斜面に生成するスメクタイトは比較的粒径が大きく、形態はより輪郭のはっきりした不定形板状を呈していることが示された。さらに詳細なスメクタイトの鉱物学的データを得るため、スメクタイトの結晶成長マイクロトポグラフの観察を試みた。結晶成長マイクロトポグラフでは、結晶粒子の生成環境を推定することが可能である。他の粘土鉱物では観察研究が進んでいるが、スメクタイトに関しては極めて少ないのが現状である。スメクタイトのみが含まれる試料において観察した結果、他の粘土鉱物に認められるような渦巻き成長パターンや層成長模パターンではなく、ひとつの結晶粒子のパターンがまるで個々の成長パターンが組み合わっているような複雑なパターンを示した。このことは結晶が成長する際に多数の核から生成した可能性を示唆しており、先に述べた結晶粒子が大きいことにも関連する。ただ、含有粘土鉱物がスメクタイトのみからなる場合に限って地すべり発生しているわけではないため、今後他の粘土鉱物と共存するスメクタイトに関しても結晶成長模様の観察が必要である。 また一方で、ある地すべり発生地域においては粘土鉱物以外の他の微粒の共生鉱物が認められた。硫化鉱物は古土鉱物が産出する熱水変質部や堆積岩中に生成する鉱物である。本研究で分析した結果、硬岩と軟岩で硫化鉱物の頻度が異なり、不均質であることから、すべり面の形成に関わっていると推測している。
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