研究概要 |
本研究では,救急車システムの効率化に資する研究について取り組んだ.研究期間最終年度の研究実施計画は,救急車システムの効率化に関する数値実験を継続し,それらの結果をまとめ報告することである.具体的な取り組みと活動は以下にまとめられる. 1.各消防署では救急車の移動時間データを記録しているが,移動経路の情報は記録していない.そのため住宅地などの狭い道路と幹線道などの広い道路に速度差を付けるような詳細な速度の推定はできなかった.そこで数値地図を利用して詳細な速度推定を可能にする手法を提案し,各消防署が記録しているデータを有効利用できるよう工夫した.また,この研究は救急車以外の移動時間データにも適用可能な基盤的研究であり,国際会議INFORMS annual meetingや日本オペレーションズ・リサーチ学会SSORにて発表(SSOR Presentation Award敢闘賞受賞)した. 2.救急車の配備場所の決定に古典的な配置問題を適用する場合について実験をおこなった.ある市における道路網や人口分布,現実の救急データなどを考慮し,メディアン問題やセンター問題,カバーリングなどを適用した.これらの近似解を救急車の配備場所と仮定し,Markov連鎖モデルを用いて現状の配備場所と詳細な比較をおこなった.この結果は,国際会議EUROや日本都市計画学会にて発表した.また,論文としてまとめ,日本都市計画学会都市計画論文集にて報告した. 3.トリアージシステムや広域化計画などさまざまなモデルに対応するため,救急車システムのシミュレータを開発した.シミュレーションは直観的に理解し易いので,愛知・岐阜県内の複数の消防署員を招き,南山大学数理情報学研究科オープン・リサーチ・センター公開研究会にて研究成果の報告をおこなった.この研究会後,広域化計画が進行中のある市と救急車の配備計画について議論をおこなうことになった.これらの研究と活動が救急システムの効率化に繋がることを期待する.
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