研究概要 |
イギリスにおける胎児利用について、本年は2004年人体組織法の実施基準補遺B「妊娠24週前の胎児喪失に伴う処分」および王立産科婦人科学会の「24週前の胎児喪失に伴う処分」を入手し、資料の読み込みを行った。資料内容についての主な不明点は、2007年9月2日から9月7日までのロンドンへの出張時に確認した。また、この出張時に教えて頂いたGlobal Safe Abortion Conference2007(2007年10月23日から24日に開催)においても、イングランド・ウェールズにおける人工妊娠中絶に関する話題と、北アイルランドにおける動きに関して情報収集を行った。なお、人体組織法の補遺と王立産科婦人科学会の資料は日本では未紹介の資料であり、資料価値が高いと判断されるものであるため、これらの資料を訳出の上日本の現状と比較し「胎児の遺骸はどのように扱われるべきか」(玉井真理子編著『捨てられるいのち、利用されるいのち』生活書院,2008)としてまとめた。 以上に加え、昨年度に引き続き、胎児利用に関する生命倫理学からの問題提起についてサーベイした。ただし、昨年度のように胎児利用のみに焦点を絞ると文献が非常に少なくなるため、本年は胎児の道徳的地位について論じたもの全般へと対象を拡大してサーベイした。収集した論文において引用されていたものの中にはドイツ語で書かれた文献がいくつかあったため、これについては翻訳を依頼し、胚の道徳的地位に関する人格主義生命倫理学からの主張の今日的状況と問題点について「胚の道徳的地位をめぐる今日の状況」(岐阜医療科学大学紀要第2号)としてまとめた。
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