研究概要 |
1.研究目的 平成19年度の研究では,平成19年度交付申請書に記載した内容を目的として乳幼児を対象にした調査を行った。その目的とは,(1)他者の要求に対する分配行動は他者の心情の推測と情動伝染効果のどちらに依るのか,(2)他者へ分配・教示という共感的反応の個人差が自己意識や親のどのような特性といかに関連するか,を明らかにすることである。 2.研究方法 生後13〜30ケ月の子どもとその保護者40組が調査に参加し,学外施設の個室内で,保護者と子どもの心身に負担にならないよう配慮して調査を行った。課題と手続きは交付申請書に示したとおりだが,オモチャ喪失場面や自己意識課題は調査時間の制約上,行わなかった。 3.研究成果 (1)他者の要求に対する応答が推論と伝染のどちらに依拠するかについては,第一他者が子どもの好みとは違うオモチャにポジティヴな情動を表出した後,第二の他者が入れ替わって子どもにオモチャを要求すると,子どもはその他者にオモチャをあまり渡すことはなかった。したがって,上記の疑問に対して明確な結果を得られなかった。しかし,昨年度のデータにおいて,高月齢の子どもにおいて,他者との好みが食い違う場合に子どもが適切に応答(他者の好むモノを渡す)する子どもは好みが同じ場合でも適切に応答する傾向があり,適切な応答は向社会的動機づけを背景としていることが示唆された。 (2)他者へ分配・教示の個人差がいかに発達するかについては,分配行動と自己鏡像認知や親の特性との関連はなかった。また,自己鏡像認知と教える行動の関連はなかった。しかし,親子の相互交渉場面で子どもの行動を模倣することの多かった親の子どもは教える行動を多く示した。このことから,子どもは親から模倣されることを通して,自他の心的相違を理解するようになり,ひいては他者の認知的欠落を補うような教える行動を発達させることが考えられた.
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