研究概要 |
本研究では遷移金属や有機導体などの強相関電子系における非平衡相転移現象をミクロなモデルから出発して理論的に解析した。また、併せて新しい計算手法の開発をおこなってきた。 (1)モット絶縁体の絶縁破壊現象の密度行列繰り込み群による研究(共同研究者;青木秀夫):強相関電子系における非線形伝導のメカニズムを調べるために一次元ハバードモデルの電場下での時間発展を数値的に追った。その結果、多体Landau-Zener機構というメカニズムの提案に至った。 (2)強相関電子系における光誘起相転移の密度行列繰り込み群による研究(共同研究者;青木秀夫):一次元モット絶縁体に対して強力なレーザー光を照射すると金属状態が生じることがポンプ・プローブ実験によって知られている。我々はこの金属状態の特性をより深く調べるために密度行列繰り込み群を用いて非平衡定常状態における光学相関関数の計算をおこなった。その結果、金属状態は電子相関によって繰り込まれた線形分散を持ち、朝永=ラッティンジャー液体として集団的に振る舞うことが分かった。 (3)実時間量子モンテカルロ法の構築(共同研究者;A. Millis,P. Werner):強相関系の非平衡相転移現象を調べる方法として有力視される非平衡動的平均場理論の構築に不可欠な実時間量子モンテカルロ法の構築をおこなってきた。そのためにHirsch-Fye法、および連続時間モンテカルロ法の非平衡分布への拡張をおこなった。 (1)についてはレビュー論文"Nonequilibrium Quantum Breakdown in a Strongly Correlated Electron System"をLecture notes in Physics, (Springer)より出版予定であり、また、(2)、(3)は成果論文を投稿準備中である。
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