研究概要 |
平成19年度は,下に述べる種々の分析手法で低融点合金SnBiの評価を行った。 (1)試料作成 融点から冷却速度(1)10^<-1> Ks^<-1>,(2)10^<-3> Ks^<-1>,(3)10^<-5> Ks^<-1>で凝固させ,様々なミクロ偏析を作製することを試みた。 (2)電子線後方散乱イメージング 上で述べた冷却速度を変化させて作製した試料3つについて,電子線後方散乱イメージングを行った。凝固過程において,巨視的なビスマス偏析が発生し,それらが冷却速度の減少とともに成長することがわかった。 (3) X線小角散乱法 ビスマス偏析をX線小角散乱法により調べたところ,電子線後方散乱イメージングとほぼ同様の結果が得られた。 (4) X線回折法測定(XRD測定) XRD測定により,ビスマス結晶子サイズが冷却速度を下げるにつれて大きくなるという傾向が得られた。XRD測定で得られたビスマス結晶子サイズが電子線後方散乱イメージングとX線小角散乱実験で得られたビスマス粒子サイズよりも一桁小さいという結果から,数十ナノメートルサイズでさらに細かく分離していることがわかった。 (5)陽電子消滅寿命測定 ビスマス偏析の発生とその成長とともにナノ空孔がどのように変化するかを陽電子消滅寿命測定法により調べた。ナノ空孔が界面に存在し,それらを構成する原子種が変化することによって,陽電子寿命温度変化が冷却速度に強く依存することがわかった。 (6)陽電子消滅同時計数ドップラー拡がり測定 上で述べたナノ空孔構成元素の変化を同時計数ドップラー拡がり測定によって調べた。冷却速度を下げることによって発生するビスマス偏析の成長と共に,界面に存在するナノ空孔がビスマスから錫リッチに変化することがわかった。
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