研究概要 |
本年度は,昨年度に収集したライダーデータを以下の点に注目しながら解析をおこなった.1.各観測地点の全データを用いての雲層の出現頻度の鉛直分布を調べ,地域間の相違と環境場の系統的な違いを考慮しながら比較した.中層の雲層の出現頻度極大は,全期間平均しても,どこの観測地点でも見られており,普遍的な性質を持っていることが明らかになった.2.出現頻度の季節変動や日周期,赤道付近で卓越する季節内振動であるMadden-Julian Oscillationに伴う変動について調べた.これまでよく言われてきたように,Madden-Julian Oscillationの対流抑制期から活発期への移行期ではなく,活発期に,最も頻繁に中層の雲層が観測されることが分った.また日周期も顕著で,明け方ら午前中によく見られることが分った.3.同時に収集する降雨レーダ,雲レーダ,ウインドプロファイラなどの観測データと比較し,降水システムとの対応を調べた. Madden-Julian Oscillationの対流活発期には,層状性降水の割合が高く,中層の雲層の頻出は層状性降水に深く関係していることが分った.4.同時に収集するラジオゾンデのデータから安定層の出現頻度を調べ,それと雲層の出現頻度を比較することで,安定層との関係について調べた.中層の安定層と雲層は,同時的に観測されることが多く,昨年度数値シミュレーションで示したように,雲微物理過程による生成が強く示唆された.
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