研究概要 |
ガラス基板上に電子線リソグラフィー/リフトオフ技術により、可視域から近赤外領域にプラズモン共鳴バンドを有する金ナノ構造の作製を行った。作製した金ナノ構造は、縦方向と横方向の長さが同じ(アスペクト比:1,厚みは40nmと一定とした)で、構造のサイズのみ10nm(一辺)ずつ変化させることにより、単一ピークのプラズモン共鳴スペクトルが約20nmずつ波長シフトする設計とした(構造サイズが大きくなると、共鳴スペクトルは長波長シフト)。作製した構造体に、センター波長800nmのフェムト秒レーザービーム(〜10μW)を集光照射し、得られた金構造からの2光子励起発光強度を計測した。金2光子励起発光強度は、構造のサイズが140nmの時に最大となり、金ナノ構造の厚みを30,20,10nmと薄く設定して作製すると、発光強度が最大となる構造体のサイズが、120nm,80nm,60nmと小さくなることが明らかになった。これは、金ナノ構造の厚みが薄くなると、プラズモン共鳴波長は長波長シフトすることから、構造サイズが小さい構造において光電場増強がより大きく誘起されたものと考えられる。以上の結果から、金2光子励起発光強度は、入射レーザー光の波長とプラズモン共鳴スペクトルのピーク波長が一致するときに最大となることが明らかになった。一方、表面増強ラマン散乱(SERS)強度は、入射レーザー光の波長では最大とならずに、散乱光波長と入射光波長の中間にプラズモン共鳴バンドを有する金ナノ構造体で最大となることが明らかになった。これまでのSERS分光法に関する理論的研究から、SERS強度は入射光電場強度だけではなく、散乱光輻射場における電磁的な増強効果においてもシグナルが増大することが示唆されているが、本研究では実験的に散乱光の輻射効率がSERS強度に及ぼすことを明らかにすることに成功した。
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