研究概要 |
本研究課題では,引張ボルト接合継手の高強度化および高耐久性化を実現し得る方法として,継手面間にボルト軸力伝達の為の鋼製部材とゴム材からなる高力ボルト引張接合用フィラープレートを挿入した引張ボルト接合継手を提案し,その力学的挙動を実験的に検討した. 平成18度には,継手部分縮小モデルによる引張力載荷実験を実施し,上述のフィラープレートを用いることで,引張力作用下においては本継手形式の高強度化が実現可能であることを確認した.また,リラクゼーション試験も実施し,提案する継手形式のボルト軸力の経時挙動は従来の引張ボルト接合継手のそれと同様であることを確認した. 平成19年度は,提案する継手を梁部材接合部に用いることを想定し,継手部分縮小モデルから梁部材接合部モデル(継手全体モデル)に対象を拡げ,橋梁の梁部材にとって最も支配的な断面力状態である曲げモーメント作用下における力学的挙動を実験的に検討した. その結果,本研究で提案しているフィラープレートを用いた継手では,終局状態に至るまでの変形性能は従来継手より優れることを確認した.しかし,本継手形式では,継手面間に鋼よりも弾性係数の小さなゴム材を挿入するため,継手断面の圧縮応力伝達に有効な断面が減少し,曲げモーメント作用下においては従来継手と比較して継手耐力が低下する結果となった.したがって,今後は,これらの実験結果を踏まえた上で,フィラープレートを有する引張ボルト継手の接触面における応力分布性状を把握し,曲げモーメント作用下において,圧縮力を適切に伝達できるよう,フィラープレートの形状および材質(軸力伝達の為の鋼製部材の形状・寸法,ゴム硬度など)を改良する必要がある.
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