研究概要 |
本研究では,気象観測ロボットによる気象観測・水循環監視のためのセンサーネットワーク構築と,そこから得られた現地観測データ及び衛星観測データ,気象モデル出力などの地球水循環データの統合的解析手法と情報融合技術の開発に取り組む.平成19年度においては,情報融合技術の開発として,気象予報精度向上に不可欠なデータ同化に取り組んだ.これまで既に大気に関するデータ同化手法として,観測衛星Aquaに搭載されたマイクロ波放射計(AMSR-E)による輝度温度を用いた衛星データ同化手法の開発に取り組んでおり,本年度は他のデータを統合的に用いることによってデータ同化手法の高度化を行った.これまでに開発された衛星データ同化手法では,気象モデル出力を入力値に用いて,観測演算子である放射伝達方程式を解き,AMSR-Eによる観測輝度温度との誤差が最小となる積算雲水量及び可降水量の同化を行ってきた.本研究では,これまで放射伝達方程式を解く際に下部境界条件として数値モデルによる海面水温を用いていたものを,AMSR-Eによる観測から算定された海面水温プロダクトを用い,データ同化時刻に実際に観測された情報によって,同化結果の改善を図った.なお,現在のAMSR-E海面水温プロダクトでは降水や雲のある領域での算定がなされないため,そうした場合には異なる観測時刻の海面水温情報を合成して境界条件として用いることとした.AMSR-E海面水温プロダクトを用いた衛星データ同化手法より得られた初期値を用いた気象予測実験においては,海面水温の微小な変化でも降水予測結果に大きな変化がみられることが明らかとなった.さらに,適切なAMSR-E海面水温プロダクトを用いた場合には降水予測精度が向上した.今後,センサーネットワークによって得られる地上観測データを合わせたデータ同化手法の高度化に取り組む予定である.
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