研究概要 |
本研究では,災害時における供給系ライフライン(電力,水道,ガス)の途絶が地域経済に及ぼす影響を計量化するために,応用一般均衡モデルを構築して経済被害の評価を行った.その中で,産業ごとのライフライン途絶に対するレジリエンシー(システム途絶への耐性)に関する基礎的な検討として,レジリエンシー指標として一般均衡モデル中のCES型生産関数の代替パラメータに着目し,先行研究で推定されているライフライン途絶抵抗係数を利用してこのパラメータの設定について検討を行った.これをふまえた上で,産業ごとのユーティリティ投入に係る代替性を応用一般均衡モデルに反映させて被害推計に適用している点に,本研究の方法論的な意義がある. 平成19年度は,いくつかのアプローチでこのパラメータの設定について検討した.企業・事業所の操業規模を考慮に入れて必要なデータ(操業水準,ライフライン機能水準など)を再整理し,階層的生産関数形を仮定して集計的アプローチでパラメータの推定を行ったところ,全階層において製造業の代替弾力性のほうが非製造業のそれよりも小さな値をとり,製造業のライフライン途絶の影響がより大きいことが明らかとなった. 一方で,応用一般均衡モデルによる分析を通して,地域産業がライフライン途絶に対してレジリエンシーを高めておくことでどのくらいの被害が軽減されうるかについても検討を行った.ここで得られた知見として,地域産業が高いレジリエンシーを有し災害に備えておくことは重要であるが,産業的に結びつきのある関連産業にもそれに見合うだけのレジリエンシーが無いと,地域全体で見た場合に効果的な被害軽減に直結するとは限らないということがあげられる.これより,複数の企業・産業間での協調やこれをコーディネートする役割の重要性が示唆される.
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