研究概要 |
少子高齢化社会においては高齢者の自発的な生活を支えるための公共交通が必要とされ,公共交通空白地区においてコミュニティバスや交通結節点へのアクセス公共交通を公的資金を投入して導入する事例が増加している。しかし,こうした公的資金の投入には,非利用者を含む一般市民がどのような賛否意識を有しており,どの程度までの負担であれば許容するのか,その利他的支払意思額は交通サービス水準によってどのように変動するのか,さらにその評価構造は利用者のそれとどのように異なるのかを把握しておくことが重要である。本研究は,高齢化社会におけるアクセス公共交通のアセスメント評価と合意形成のプロセス設計を目的とし,次の4点を明らかにし,検討を行った。 1)アクセス公共交通導入に対する非利用者の利他的な支払意思額構造の分析を目的として,愛知県豊橋市において住民の意識調査を実施し,アクセス公共交通に対する非利用者,利用者の支払意思額構造を分析した。利他的な支払意思額には,都心部,郊外部の住民ともに運行間隔が大きく影響することが分かった。最大の支払意思額については都心部の住民の方が1000円程度高かったが,これは郊外部の住民にはアクセス交通を利用すれば運賃を負担しなければならず,その分の世帯の負担意思は低くなるような意識が働くものと考えられた。 2)バス停までの徒歩時間は,非利用者,利用者ともに支払への賛否にはあまり影響がないという結果であった。 3)利用者としての支払意思額には,運行間隔の影響が大きいことが分かった。また,交通サービス変数の限界支払意思額の相対的な大きさは非利用者の場合と異なっていることが分かった。 4)以上の分析結果をGISを用いて視覚化し,居住地の交通環境による満足度や支払意思の違いを明らかにした。住民が互いの状況を認識した上で,公共投資の議論を行う合意形成のプロセスを検討した。
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