研究概要 |
本研究課題はマイクロスケールにおける流動現象が流体物性の影響が顕在化する点に着目し,フォトサーマル効果を用いて任意の時空間物性分布を非接触で誘起するマイクロスケール独自の流体挙動制御手法の新規提案を行うものである.集光したレーザを励起源とすることで,マイクロチャネル内部に任意形状の流体物性分布を与え,様々な流れ場に適用可能な流動制御システムを開発し,実験的に新規提案手法の有効性を明らかにすることを目的とする. 本年度は,フォトサーマル物性分布励起用光学システムの構築,マイクロチャネル内流体への適用,及びレーザ誘起物性分布が流動構造へ与える影響の計測について特に重点的に研究を遂行した.得られた成果は以下のようにまとめられる. 1.小型半導体レーザ及び長作動対物レンズによってレーザ光をマイクロ流体デバイス上部より集光・照射して10pmオーダの局所物性分布を誘起可能な励起光学システムを構築した. 2.励起光学システムを倒立顕微鏡上のマイクロ粒子画像流速計システムに組み込み併用する事で,物性分布の励起とその際の流動場観察を同時に実現する実験装置の構築を行い,予備的実験を通じてシステム全体の健全性を確認した. 3.幅500μm,厚さ50μmのマイクロチャネル内を流れる水に対して,本研究で開発した実験システムを適用した.励起光学システムを用いて局所的な温度分布を与えて物性分布を誘起すると流動構造に変化が見られることを速度場の変動より確認する事ができ,本提案の有効性を実験的に示す事ができた. 4.励起用レーザの光強度を変化させてマイクロ流れに適用し,流体が吸収するエネルギー量を変化させる事で流動場へ与える影響が変化する様子を明らかにした.
|