研究概要 |
平成19年度の成果として,天然繊維(ジュート繊維)中の含水分がポリ乳酸樹脂の加水分解にどのように影響しているかを調べた.その結果,ポリ乳酸樹脂との複合化前のジュート繊維の乾燥状態および造粒(ペレット)後の乾燥条件によって含水分量は変化し,ペレット含水分量と射出成形後のポリ乳酸の分子量には負の相関があり,射出成形での可塑化中にも加水分解によるポリ乳酸の劣化(生分解)が進んでいることが明らかになった.また,ポリ乳酸の分子量低下は機械的特性も低下させ,ジュート繊維で強化させているにも関わらずペレット時の含水分量が1wt%を超えると分子量が半減し,元のポリ乳酸ペレット(分子量が低下していない状態)で射出成形した機械的特性の結果よりも低くなった.さらに,成形品中でも天然繊維内部に抜けきらない水分が残存すると,成形品の乾燥によっても変形と同時にポリ乳酸の分子量は低下することが分かり,ペレットにするまでの段階で如何に繊維内部の水分を除去できるかが,機械的特性向上の課題であり,繊維内部の水分が抜け易い構造の長繊維ペレットが有効であることを示した.一方,上記結果よりペレット製造時のエアープラズマ処理およびエアーブロー処理によるオンラインでジュート繊維内部の含水分率を1wt似下に除去することは極めて困難であった.オフラインでの熱風乾燥および誘導加熱によってジュート繊維は短時間で繊維内部まで水分除去に効果があることが分かったが,紡績糸の供給形態であるボビン状(紙管に巻かれた状態)では,加熱時間の増加と共に熱が中心部に蓄積され繊維が熱劣化し,ジュート繊維の加熱方法に課題を残した.エアープラズマ処理による界面改質の効果の有無に関しては,含水分の影響が極めて大きいためその傾向は見出せなかった.しかし,ジュート繊維との複合化によりポリ乳酸の耐熱性に向上は見られた.
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