研究概要 |
(1)部分ペプチドを用いたプリオンのアミロイド線維形成部位の系統的スクリーニング プリオンの全領域に渡り部分ペプチドを作製して,それぞれの役割に注目してアミロイド線維形成について調べた。線維形成はチオフラビンT蛍光と円二色性(CD),電子顕微鏡により確認した。その結果,プリオンの全領域のうち,C末側のヘリックス2とヘリックス3領域のペプチドがよくアミロイド線維を形成した。しかし,構造をもたないN末側のペプチドは全く線維を作らなかった。また,今回の条件では線維を作らなかったが,疎水クラスター領域のペプチドも線維を形成することが報告されている。これらの領域は一次配列上で疎水性が高い領域とよく一致する。よって,線維形成には分子間の疎水相互作用が重要であり,疎水性が高いヘリックス2と3を含むC末側が重要であると考えられる。 また,興味深いことに,ヘリックス2の線維は酸性溶液中でαヘリックスに富むCDスペクトルを示した。しかし,電子顕微鏡で確認するとアミロイド様線維が確認された。通常,アミロイド線維はβシートに富む。今後,ヘリックス2の領域に注目して,線維形成能とその構造について詳細に調べる予定である。 (2)超音波を用いたマウスプリオン(mPrP)の試験管内アミロイド線維形成 これまでの研究で,全長mPrPは線維を形成しにくく,N末側を削除したPrPは線維をよく形成することが知られている。本研究では,リコンビナント全長mPrPを用いて,超音波を断続的に照射してアミロイド線維形成について調べた。その結果,37℃で数日間インキュベートすると,線維に特異的に吸着するチオフラビンT蛍光の値が上昇した。しかし,電子顕微鏡で確認をすると,線維状ではなくオリゴマー状の凝集体しか観察されなかった。今後,かく拌など,より緩和な手法を用いて線維形成について調べる予定である。
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