研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである. 1,アサガオやキンギョソウの老化花弁でプログラム細胞死(PCD)の特徴であるDNAや核の断片化が生じていることを確認し,花弁の老化にPCDが関与することを明らかにした.この結果,これらの植物の花弁老化時に発現量が変化する遺伝子(花弁老化関連遺伝子)を単離・解析することで,植物のPCDに関与する遺伝子の同定が可能であることが示唆された. 2,cDNAサブトラクション法とディファレンシャルスクリーニング法を用いて単離したアサガオの20種類の花弁老化関連遺伝子について,Real-time RT-PCR法により発現解析を行ったところ,多くの遺伝子が老化症状の現れる直前の花弁で特異的に発現量が増加することを明らかにした.この結果,これらの遺伝子が花弁老化(PCD)の誘導にポジティブに関与している可能性が極めて高いことが示唆された. 3,アサガオより単離した20種類の花弁老化関連遺伝子について,それぞれのcDNA断片をGATEWAY法により市販のベクター(pH7GWIWG2(II):選抜マーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子を含む)に導入し,RNAiを誘導するためのコンストラクトを構築した. 4,アグロバクテリウム法により4種類のRNAiコンストラクト(LR1,LR3,LR4,LR5)をアサガオの不定胚形成カルスに導入したところ,LR1,LR3およびLR4でハイグロマイシン耐性を示す再分化個体を得た.再分化個体は順化後直ちに開花し,LR1とLR3で自殖種子を得た. 今後は,アサガオへのRNAiコンストラクトの導入を進め,得られた再分化個体の自殖後代について,導入遺伝子の確認や発現解析,表現型の調査などを行い,花弁老化関連遺伝子の発現抑制が植物の諸形質に及ぼす影響を明らかにする予定である.
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