研究概要 |
TMVは感染細胞内でER膜上に移行タンパク質を含んだVirus replication complex (VRC)を形成する.VRCは時間とともに細胞内を移動し,最終的には原形質連絡を経由しで隣接細胞へと移行して行くことを以前に報告した.しかし,複製酵素が直接細胞間移行しているという報告はまだない.そこで我々は移行タンパク質非存在下における複製酵素の細胞間内および細胞間移行能の有無を明らかにするため,坑ウイルスタンパク質抗体を用いた免疫沈降法でウイルス移行タンパク質を主とするウイルス移行型複合体とウイルス複製酵素を主とするウイルス複製複合体が同一のものであるか調べている。今年度、3D画像解析法により感染後16時間以降に複製酵素と移行タンパク質が感染細胞内で密接に相互作用することを示した.また、温度感受性変異株TMV-Lsl(Lsl)は低温条件下では正常に細胞間移行を行えるが、高温条件下(28度以上)では移行型複製複合体を形成できず、結果として細胞間移行を行えないことを明らかにした.高温条件下のLsl複製複合体には、野生株のTMVに比べて含有される移行タンパク質の量が著しく低く抑えられていたのである.現在は免疫沈降法で経時的に精製した複製複合体や移行タンパク質複合体を,エキシマレーザー顕微鏡を用いて直接葉の上皮細胞へ導入を試み、ウイルスタンパク質複合体そのものに感染性があるか調べている.今後は、本研究を通じて移行タンパク質が細胞間移行および複製に果たす役割を明らかにしたい。
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