研究概要 |
沖縄島北部ヤンバル地域に広がる亜熱帯性常緑広葉樹林では,数多くの固有種を含む複雑な生態系が形成されている。しかしながらこの地域の森林では,戦後から現在にかけて大規模な伐採や開発が実施されてきた。そこでまず,これらの伐採・開発が地域の生態系に与えた影響を評価するため,第二次大戦中から現在に至る4時期の空中写真データを整備した。空中写真はデジタルオルソフォトに加工し,地理情報システム(GIS)上で判読を行った。その結果,1944年度の写真からは,集落背後の山腹を畑地に転換している様子が見て取れた。また比較的大きな河川沿いでは,海岸線から2〜3kmのところまで伐採が行われている様子が伺えた。1972年度と1977年度の写真からは,林道網が発達し,中央部の山地でも伐採活動が活発化したことが読み取れた。また,なだらかな尾根上を舌状に畑地化する様子も広く見受けられた。2001年度の写真からは,この地域の森林植生が回復しつつあることが見て取れたが,一方で農地開発による大面積裸地も出現していた。 また,この地域の森林を管理する上で,立地環境に基づいたゾーニングは不可欠と考えられた。そこで本研究では,50年以上破壊的撹乱を受けていない二次林を対象とし,平均勾配,有効起伏量,露出度,傾斜の4つの数量的地形因子を用いて,地形が林分構造に与える影響を把握した。その結果,尾根地形では幹密度は高いものの個体サイズが小さくなり,林分全体での材積は有意に少なくなっていた。一方,谷地形では幹密度は低くなったが,個体サイズは大きくなり林分材積も多くなっていた。山腹地形はそれぞれ中間程度の値を示した。このように地形に沿った林分構造の違いが確認され,ヤンバル地域での木材生産に適した立地環境の情報も集積された。
|