研究概要 |
平成19年度は平成18年度に続き、20週目の剖検時における病理組織学的解析と、採取した大腸粘膜を用いて、発がんに関与する遺伝子の発現をリアルタイムPCRにて解析を行った。剖検時、いずれの実験群にも体重および肝重量に有意な差は見られなかった。一方、大腸の長さに関してはAOM+1.5% DSS+0.1% PGO群において、その他の群よりも、大腸が有意に短かった。大腸粘膜潰瘍と異型陰窩の発生に関して、AOM+1.5% DSS群と比較して、PGO処理によりいずれの濃度においても有意な(P<0.001)抑制が観察された。大腸腺腫の発生に関してはAOM+1.5% DSS群(0.9±1.10)で50%の発生が見られ、1% PGO処理(0.3±0.71)により抑制傾向が見られたものの有意な差は得られなかった。一方、腺がんの発生に関しては、AOM+1.5% DSS群(2.9±1.29)で90%の発生が見られ、いずれの濃度においても有意抑制効果が見られた(0.01% PGO:0.9±0.78,P<0.01,0.1% PGO:1.2±1.14,P<0.05,1%PGO:0.9±1.27,P<0.01)。さらに、大腸粘膜における発がん関連遺伝子(PPARγ、COX-2)の発現をリアルタイムPCRで解析した。その結果、20週時においてPGO処理によるPPARγの発現増加、COX-2の発現抑制の傾向が得られた。以上の結果から、CLNを高濃度含有するPGOは、炎症を背景とする大腸がんの発生を抑制することが明らかとなった。また、腺腫の発生に有意な差は見られず、腺がんの発生において顕著な抑制が見られたことから、特に腺腫から腺がんに進行するプログレッションの段階にPGOが作用することが示唆された。
|