研究概要 |
我々は末梢神経欠損間隙に対する新しい治療法として,末梢神経緩徐伸長法を開発し臨床応用を目指している.本研究では,本法の適応と限界を明らかにするとともに,緩徐伸長された神経の細胞体における分子生物学的変化を研究することを目的とした。本年度は本法を用いて修復した神経の再生能を従来法である遊離神経移植術と比較し、本法の有用性について評価した。また後根神経節における変化(apoptosis検出)についても評価,行動解析と後根神経節における疼痛関連物質の定量により治療中の疼痛に関する評価を行った.縫合後の再生能は家兎を用いて手術後16週目に電気生理学的(運動神経伝導速度測定)および組織学的(横断切片の有髄軸索数および軸索径)で評価したが、いずれも神経伸長群は遊離神経移植群より有意差を持って優れていた。本法は新しい末梢神経欠損間隙治療法として有用であると考えられた。神経伸長時の疼痛に関する研究ではラットを用いて実験を行った。神経伸長群と神経因性疼痛モデル(鎖骨神経結さつ切除モデル)およびSham operation群を作成し、後根神経節細胞のapoptosisを神経伸長開始後14日目にTUNEL法にて評価した。いずれの群においてもTUNEL陽性細胞率に認められなかった。神経伸長中および伸長後の疼痛に関して、自傷行動の解析・疼痛関連物質(TNF-α、c-Fos)の免疫染色にて評価した。自傷行動はいずれの群も差はなかったが、疼痛関連物質の発現は神経因性疼痛モデル群より神経伸長群が少なかった。神経断端直接伸長において神経因性疼痛や伸長刺激による侵害性の疼痛は生じないことが示唆された。
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