研究概要 |
統合失調症の正確な診断、病態理解のため,陽性症状のみならず陰性症状とも深い関係があるNMDA受容体の機能変化を生体内で非侵襲的にイメージングする手法が望まれている。そこで本研究では,NMDA受容体のグリシン結合部位及びNR2Bサブユニットを標的とした核医学イメージング薬剤の開発を行った。 グリシン結合部位を標的としたPETイメージング剤として,4-ヒドロキシ-2-キノロン誘導体の5位にエチル基あるいはヨウ素原子を有し,3'位にメトキシ基を有する^<11>C標識化合物を開発したところ,いずれも高親和性を示した(Ki値:Et体;7.2nM,I体;10.7nM)。しかしながらこれら2つのリガンドは受容体へ全く違う結合様式を示した。すなわちラット脳切片を用いたin vitro評価により,Et体はNR2Bの存在を反映した前脳への特異結合を示し,I体はNR1の存在を反映した脳全体への特異結合を示した。従って,NMDA受容体はサブユニット構成や活性状態により,リガンドの微妙な構造の違いを認識することが示唆された。今後は5位の置換基と受容体への結合様式との相関を検討することで,NMDA受容体のリガンド認識部位に関する新たな知見が得られるものと考えられる。 NR2Bサブユニットを標的としたSPECTイメージング剤として,ベンズイミダゾール誘導体の末端ベンジル基4位を放射性ヨウ素化した新規リガンドを開発した。新規ヨウ素誘導体はNR2Bに対して非常に高い親和性(IC_<50>=1.5nM)を示した。そこで^<125>I 標識リガンドを合成して,マウスを用いたin vivo評価を行ったところ,早い血中クリアランスを示し,肝臓,腎臓に高集積を示した。一方,脳移行性は低く,NR2Bの分布を反映した集積を示さなかった。よって本リガンドはNR2Bを標的としたイメージング剤として不適切であることが明らかとなった。
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