研究概要 |
反復する心室頻拍・細動(Electrical Storm:ES)を呈する新しい動物モデルを確立した.独自に所有する慢性完全房室ブロック(CAVB)家兎モデルに植込み型除細動器(ICD)を植え込み,臨床症例と類似なESのエピソードを再現することが可能であった.ICD植込み手術を行い感染症などの合併症を有しなかったCAVB家兎(n=15)では,QTc間隔が延長し(0,21日目,185±10,226±11ms,P<0.05),非持続性心室頻拍が頻発した.その後,11羽(73%)がES(24時間以内に3回以上の心室細動エピソード)に進展した.ESは補充調律開始後35±9日目に出現し,82±8日の観察期間中14±4日間に認められた.QTc時間は,ES時に著名に延長した(271±12vs.219±10ms,P<0.05).ICD作動回数は,1羽あたり平均86±29回で総計1163回に及んだ.浸透圧ポンプを用い,カルモジュリン拮抗薬W-7を1週間持続投与したところ,用量依存性に心室頻拍・細動エピソードが減少し,ESが抑制された.CAVB家兎心室筋ではコントロールに比しカルモジュリンキナーゼIIの発現が増加した.ESを呈した家兎では,VFエピソードはあったがESに進展しなかった家兎に比し,その増加がより顕著であった.これらの実験結果から,カルモジュリン・カルモジュリンキナーゼ系細胞内シグナルがこの動物モデルのES発生に重要な役割を果たしていることが示唆された.Ca^<2+>ハンドリングの発現・機能変化,及び,カルモジュリンキナーゼ発現の程度によるCa^<2+>ハンドリングの変化の相違についての検討を現在継続している.本課題は,ESに関する初めての実験研究であり,これらの電気生理学的・分子生物学的変化の特徴から,重篤な不整脈についての理解を深めることができるとともにESの治療・管理に役立つと考えられる.
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