研究概要 |
本年度は、センダイウイルスのマトリクス(M)蛋白質中のYLDL配列が、この蛋白質のもつウイルス様粒子(VLP)の形成・出芽能に重要であることを明らかにした。さらに、M蛋白質がこの配列を介して、宿主の多小胞体ソーティングなどに関与するAlix/AIP1と機能的に相互作用することを見いだした。Alix/AIP1は、センダイウイルスのアクセサリー蛋白質であるC蛋白質とも相互作用することが報告されているが(Sakaguchi et al., 2005)、Alix/AIP1上の相互作用部位が、M蛋白質とC蛋白質で異なること、また、以前に報告されているC蛋白質によるVLPの出芽促進作用は、M蛋白質とAliX/AIP1との相互作用に依存しないこと等を明らかにした。以上の結果を論文にまとめ発表した(Irie et al., 2007)。 また、C蛋白質による出芽促進作用のメカニズムを明らかにすることをめざし、以下のことを明らかにした。すなわち、C蛋白質のN末端配列は原形質膜へのターゲッティングシグナルとして機能するが、C蛋白質との相互作用により、Alix/AIP1が出芽の場である原形質膜にリクルートされる。これにより多小胞体ソーティングに関与するESCRT複合体がリクルートされ、これを出芽に利用できるようになり、出芽が促進される。これらの結果を論文にまとめ、現在投稿中である。 以上の結果から、M蛋白質とC蛋白質はそれぞれ出芽の原動力としての機能及び出芽を促進する機能といった別個の役割を果たすことが明らかとなったが、本年度は、さらにこれらが出芽においてどのように連携するのかを明らかにしたい。
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