自律神経活動は1日中一定の緊張を維持するわけではなく、サーカディアンリズムを有し、昼間は交感神経優位で夜間は副交感神経優位と両者は相反的に変動することが知られている。このリズムは、行動に伴う自律神経活動の変化の積み重ねによって形成され、食事、睡眠、運動などの修飾因子の影響を強く受ける。このため、自律神経活動を24時間にわたって観察することは生理的、病態的な意義が大きいといわれている。本研究は、歩数運動強度、運動量などの身体活動に焦点をあて、健常な成人において目々の身体活動が自律神経活動の生体リズムにどのように影響を与えるかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、7名の成人の被験者を対象に心拍変動と身体活動量の測定を8日間実施した。その間、被験者は自由行動下で通常の生活をして過ごした。測定の結果、心拍変動には睡眠と身体活動のリズムに同期した、おおよそ24時間と12時間の周期が存在し、身体活動が大きな修飾因子となっていた。また、おおよそ8時間の周期や30時間を越える周期も存在することから、身体活動の影響が比較的長時間に及んでいる可能性も示唆された。さらに、通常、夕方から深夜にかけては身体活動量・心拍数ともに減少し副交感神経活動優位の状態となるが、夕方から深夜にかけてアルバイト等により身体活動量が多い事例では、心拍数も多く、睡眠中の副交感神経活動の明確な高まりも観察できなかった。今後は得られたデータを基に、食事、飲酒、喫煙の影響についても検討を加えたいと考えている。
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