研究概要 |
日本において悪性脳腫瘍や転移性脳腫瘍に対する治療は,手術治療,放射線治療,化学療法等がスタンダードとして行なわれている.しかし未だに患者の生存率が低く,これらの集学的治療の他にさらに効果をあげる方法が必要とされている.免疫学的治療法は,このひとつと考えられる.養子免疫療法の成功の鍵を握る因子について基礎的研究を行なうことが本研究の目的である.方法としては,まずマウス脳腫瘍モデルを作成.一方で養子免疫療法のための腫瘍抗原特異的リンパ球を準備する.Interferon gammaを分泌するtype I cytotoxic T cell(Tcl)に3-4日間で誘導し,脳腫瘍モデル作成6-7日後に静脈投与した(養子免疫療法).腫瘍内投与するための樹状細胞は,C57BL/6(H-2^b)系マウスの骨髄細胞から採取培養を行なった. 結果として,腫瘍内にinterferon-alphaを分泌する樹状細胞を投与することにより,腫瘍抗原をリンパ球に抗原提示し,かつ樹状細胞から分泌される,interferon-alpha等のサイトカインにより腫瘍内からケモカインがより多く分泌され,静脈投与されたリンパ球がより効率的に遊走・集積し腫瘍細胞を攻撃する結果が得られた.また有意に脳腫瘍モデルマウスの生存期間が延長した.このことから脳腫瘍モデルマウスに対して樹状細胞やリンパ球投与といった免疫治療を行うことは,将来的にも臨床の場で効果的な治療法となる可能性がある.また本研究の成果は,脳腫瘍患者のみならず,他の癌患者にも,応用できるものと考えられる.
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