昨年度に続き、九州工業大学大学院生命体工学研究科脳型計算機研究室(以下、脳型計算機研究室)及び九州歯科大学病態制御学分野(以下、病態制御学分野)と3者での研究を継続した。 本研究の目標は、口腔粘膜疾患の人工診断であるが、コンピュータを用いた人工診断については、検討の過程で、立体視技術を用いない方策を採ることとした。これは、標本(病巣部分)の取扱い、撮影方法の標準化が困難なことに加え、立体情報を分析するアルゴリズムに相当の困難があったためである。 研究の方向性として、引き続きアーカイブ(診察記録または教材)として利用することを前提に、システムの構築及び検証を進めた。 デスクトップPCに、高解像度USBカメラを組み合わせ、ソフトウェアエンコーディングの後に記録し、再生は液晶立体視モニタとするシステムを最終形とした。PCはノート型でも稼働できることから、可搬性を重視した構成とすることも可能である。一方で、ソフトウェアエンコードの限界もあり、動画記録の場合では、かなり画質を落とす必要が生じ、診断レベルには到達できないことも判明した。さらに、課題として、至近距離の立体視撮影をする関係上、寄り目機能が必須であること、被写界深度を確保することが上げられた。一方、LED光源が多色化していること、CCDの受光感度が赤外線領域にも及ぶことから、一部の口腔粘膜疾患では肉眼的診断の制度を向上させる可能性が示唆された。 これらの問題を引き続き解決することにより、口腔粘膜のアーカイブ化を、より確実にすることが可能と考えられる。
|