研究概要 |
本研究課題の19年度の計画として引き続き「機能性分子の設計・合成」「アニオンレセプターへの適用」を検討し,「キテリティー制御を志向した環状芳香族アミドの設計・合成」を続いての目的とした。まず機能性分子として,環状芳香族アミドを基本骨格に持つ種々の合成を行なった。特に,これまでのアミノ安息香酸誘導体をモノマーとする環化体だけではなく,ナフタレン,ビフェニル,テルフェニルやジフェニルエーテルを基礎骨格として有する環状化合物を合成し,単結晶X線構造解析によりそれらの構造を明らかにすることに成功した。さらにこれらの化合物の動的挙動を温度可変NMRによって明らかにし,その立体的特性を考察した。また,アニオンレセプターへの適用として,新たにスルホンアミド基を導入した環状芳香族アミドを合成した。ここでは分析の容易さを考慮し,紫外光に対して敏感であるダンシルクロリド基の導入を行なった。また,この時の会合定数は,紫外・可視光分光光度計を用いて決定した。 続いて,キラリティー制御を志向した環状芳香族アミドとして,オルト位に置換基を有するパラ置換環状芳香族アミドを合成した。合成したキラルな環状芳香族アミドのシン体,アンチ体をカラムクロマトグラフィーで分割した後,キラルHPLCを用いた光学分割によってそれぞれのエナンチオマーの分割を行なった。今回の研究で,環状芳香族アミドの光学分割には初めそ成功している。それぞれの精密構造解析は現在検討中であるが,CDのシグナルから,光学活性体の単離に成功したことを確認している。 以上,18年度からあわせて,機能性分子としての環状芳香族アミドを合成し,アニオンレセプターなどの分子認識分子としての可能性を示すことができた。また光学分割により,キラルな環状芳香族アミドを分割することで光学活性な環状芳香族アミドの単離に成功した。
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