研究概要 |
血液脳関門(BBB)は脳血管内皮細胞の強固な密着結合および薬物輸送担体により,薬物脳移行性を制限している。このBBB機能は,脳血管内皮細胞周囲に存在する脳ペリサイトおよびアストロサイトにより協調的に制御される。本研究者はこれまでに脳ペリサイトがBBB機能に促進的な役割を果たすことを明らかにした。一方,高脂血症は動脈硬化症を引き起こすことから,脳血管障害が易発症である。病態時におけるBBB機能変容の解明は,病態依存的な薬物脳移行に基づく副作用発現の予測、回避やBBB病態治療を指向した創薬研究に必要不可欠である。本研究では,高脂血症におけるBBB病態を明らかにする目的で,脳ペリサイトの形態機能的変化およびこれに伴う脳血管内皮細胞密着結合性の変化について追求することを企てた。 脳ペリサイトの形態機能的変化(収縮、弛緩)の検討;脳ペリサイトの収縮、弛緩反応評価系を構築するため,血管弛緩因子adrenomedullin(AM)のペリサイトに対する作用を検討したところ,AMはcAMP/PKA経路を介してペリサイトを弛緩させることが明らかとなった。高脂血症病態下においての脳ペリサイトによる脳微小血管調節作用を評価するうえで,本評価系を確立したことは意義深い。 OncostatinM(OSM)のBBB機能に対する影響;アテローム性動脈硬化症のプラーク形成時にプラーク内マクロファージから産生されるOSMのBBB機能に対する作用について検討した。脳血管内皮細胞から成るinvitroBBBモデルを作製し,OSMのtightjunction(TJ)機能に対する作用について検討したところ,OSMはZO-1およびclaudin-5の細胞局在を変化させTJ機能を低下させることが明らかになった。脳血管内皮細胞およびペリサイトを共培養したinvitroBBBモデルにおいても同様の知見が得られた。 以上,本年度は脳ペリサイトの収縮、弛緩反応のinvitro評価系の確立及びBBB機能変容分子としてのOSMの役割を明らかにした。
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