研究概要 |
多発性硬化症(MS)は、T細胞が介在する自己免疫性脱髄性疾患であると考えられている。マウス動物実験において,インターロイキン(IL-)17産生性T細胞(Th17細胞)が高い病原性を有することが近年確立されつつある。また、視神経脊髄型(アジア型)MSで、髄液中のIL-17濃度上昇が報告され,MSにおいても、同様の可能性が示唆されている。本研究の目的は,ヒトTh17細胞の分化と機能制御機構の解明とMS病態における役割の解明である。 T細胞が病巣へ浸潤するには、ケモカインによる病巣への誘導が必須である。Th17細胞のケモカイン反応性は不明であったが,我々はCD4陽性メモリーT細胞分画のケモカインレセプターCCR2陽性CCR5陰性細胞が、大量のIL-17を産生する一方,IFN-γは殆ど産生せず、この分画がヒトTh17細胞であると報告した(J.Immunol.2007)。我々と同時期に他の研究グループからCCR4陽性CCR6陽性細胞がTh17細胞であると発表された(Nat.Immunol.2007)。我々は,6-color-flow cytometryにより、2つの分画のフェノタイプおよび機能解析を行った。その結果,この2つの分画は,互いにオーバーラップの無い,異なる分画であるが,IL-17産生能については,同等であることが判明した。以上より,これら2つのTh17細胞分画は,異なる炎症の場に動員され,それぞれ独特の役割を果たしていると考えられる。この結果は,MSのTh17細胞の病巣への浸潤機構の解明のみならず、ヒトTh17細胞の分子生物学的解析にも貢献するものと考えられる。
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