研究実績の概要 |
近年、がんの病態を培養ディッシュ上で再現できる新たなシステムとして三次元細胞培養法(オルガノイド培養法)が開発された。ヒトと違いイヌの前立腺がん は、診断時に末期的な症状を示すことが多く、手術やバイオプシーによる組織の採取も困難なことから、既存の方法を用いたがんオルガノイドの作製は不可能で あった。これまでの研究において受け入れ研究者は、前立腺がん罹患犬の尿サンプルを用いて前立腺がんオルガノイドを作製する方法を見出した(Usui et al.,Cancer Sci, 2017)。本研究では、犬前立腺癌の制御機構や血中腫瘍細胞の回収法を検討することで新規治療・診断法の開発につなげることを 主たる目的とした。今年度は工学部との共同研究によってシングルオルガノイド解析を実施し、オルガノイドの抗がん剤感受性や腫瘍形成能を規定する遺伝子群を複数同定し、特許出願を進めている。また、犬泌尿器がんの新たな培養法に関する論文をScienctific Reports誌に出版した(Amira et al., Scientific reports. 2020)。さらに、犬の転移性前立腺癌の血中循環腫瘍細胞をトラップするシステム開発のために、健常犬を用いたアフェレーシス法に取り組んだ。がん細胞と比重が近い単核球を効率的に回収する麻酔法やカテーテル法の条件を探索し、犬を用いた最適なアフェレーシス法の実施条件を同定した。
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